■公務災害認定手続を18年放置された元教員への控訴審不当判決を弾劾する!!

 高裁に公正判決を求める緊急の署名要請につきまして、関東はもとより東西日本各地から多数のご協力をいただき心より感謝申し上げます。
 高裁結審から判決期日までの短い期間ながら三次にわたる署名提出行動に取り組み、記者会見も行うことができました。しかし、高裁では途中、裁判官交代による訴訟指揮に変化があり、当初の裁判官が強く東京都に迫った早川さんの当時の病状の原因説明について、交代した裁判官は一顧だにしない態度で切り捨てて不当判決に及びました。
この異様な不当判決について別掲載の通り、緊急の不当判決弾劾の声明を発表し、ただちに上告いたしました。
闘いは続きます。
引き続き、ご支援ご協力をお願いいたします。
※判決文は当該ならびに支援団体にお問い合わせください。

声明文

【公務災害認定手続を18年放置された元教員への控訴審不当判決を弾劾する!!】
1. 2023年3月16日、東京高等裁判所第21民事部(永谷典雄裁判長)は、控訴人早川由紀子(以下「早川」という。)の控訴を棄却する不当判決を言い渡した。
2022年1月13日に東京地方裁判所民事第36部(三木素子裁判長)が言い渡した請求棄却判決(以下「地裁判決」という。)を踏襲した、高裁の判断としては僅か3頁の判決である。この手抜きというべき判決を、怒りを込めて弾劾する。
 早川は、1972(昭和47)年9月16日に数学教員として着任した大田区立羽田中学校(以下「羽田中」)において、羽田空港の騒音や空調の不備などの劣悪な職場環境や、長時間労働、長時間の横書き板書作業等上肢や腰部に負担のかかる作業を行ったために、同年中に体調が悪化し、1973(昭和48)年11月には病院で受診し、1974(昭和49)年4月に重度の頸肩腕障害である中枢神経疲労症候群と診断された。
 その後も、転勤後の文京区立第九中学校(以下「文京九中」)及び文京区立第七中学校(以下「文京七中」の管理職による病者・子育て者等排除のすさまじいパワハラによって、早川の症状は増悪(=悪化)した。本件は、この早川の頸肩腕障害および腰痛症の発症と増悪が公務に起因するという認定を求め、それを否定した地方公務員災害補償基金(以下「基金」という。)の決定の取り消しを求めるものである。


2. 第一審においては、以下の5点が主たる争点とされたが、地裁判決は、(3)の早川が1973年11月に頸肩腕障害を発症したことについて認定しながら、その余の争点についてはいずれも基金の主張を容れ、結果として、不当にも頸肩腕障害の公務起因性を認定しなかった。
(1)早川による公務災害認定請求が、18年もの間文京七中の校長室に放置され、その間に多くの証拠が散逸し、又は破棄されてしまったという、本件における最大の特殊性が考慮されるべきではないか

(2)本件の公務起因性の判断枠組みは被告の自作自演の「上肢障害の認定基準」等でよいのか
(3) 早川は1973年11月には頸肩腕障害を発症していたか
(4) 早川における頸肩腕障害及び腰痛症発症の公務起因性
(5) 早川における頸肩腕障害及び腰痛症の増悪の公務起因性

3. 控訴審第1回期日において、裁判長が早川の業務の過重を認め、早川の症状が甲状腺機能低下症(橋本病)などの他原因によって発症したものでなければ業務に起因する頸肩腕症候群であると示唆した。これに対し、早川は、早川の症状が甲状腺機能低下症(橋本病)によるものではないとの医師の意見書を提出した上で、羽田中における過重労働、上肢や腰部に負担のかかる作業を行ったこと以外に頸肩腕障害を発症させる原因は存在しないことを強く主張した。
 しかしながら、裁判長が交代した下で、高裁判決は「控訴人が昭和48年11月頃に発症していたとする腕、肩、首及び腰の痛みの症状に関しては、家事労働及び育児等の日常生活における行動や素因等も発症に関与する要因と考えられ、甲状腺機能低下症が発症していないからといって、直ちに本件疾病が公務に起因するとはいえない。そして、控訴人が、羽田中学校において、頸肩腕障害の発症までに上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事していたとも発症前に過重な業務に従事していたともいえ」ないと判示した。
 上記の判示内容は、第一審、第二審を通じて早川が行ってきた業務内容に関する主張立証、過重労働の実態に関する主張立証を悉く捨象し、女性は家事労働及び育児をするものというジェンダーバイアスに基づくものである。実際は、早川は、1974年6月の産休明け後は乳児を実家に預けて残業を含む業務を行ない、夏休みも疲弊のため育児は自分の親に任せざるを得ず、二学期も乳児を保育園に預けて勤務していた。高裁判決は、地裁判決に引き続き、こうした早川の主張を無視して客観的事実に向き合わず、事実審としての職責に悖る極めて不当な態度を示したのである。

4. また、上記(1)については、地裁判決は、文京七中校長らの行為は、あくまでも文京区の公権力の行使であって、被告(基金)の公権力の行使ではないから、公務起因性の立証責任を被告に転換すべき理由とはなり得ないとしていた。高裁判決は、文京九中と文京七中の校長が行うべきであった証明行為は、単に公務災害認定請求書の記載内容の正確性を担保する等のために求められているとし、当該証明行為は基金の行為ではなく、また、文京九中と文京七中の校長が早川の請求書を握りつぶした労災隠し行為は基金の公権力の行使ではないとした。
 これは、公務災害認定請求について、所属長の証明のない請求書は受け付けないという基金による誤った運用(2012年最高裁決定で違法運用と確定)によって基金の一連の手続きに含まれていたはずである文京九中と文京七中の校長の行為を、単なる形式論によって論じ、被害救済の途を閉ざした極めて不当な判断である。
 そもそも、国賠訴訟の要件である公権力の行使を、立証責任が転換しない理由とする判断枠組みが誤っている。また、控訴に当たって早川が強調した、基金自身が早川の請求書の受け取りを拒否した事実をも無視するものである。
 違法にも当初において正当に請求書が受理されなかったため多くの証拠が保存期間切れで失われたのである。このような行政の不作為を不問にすることは、証拠隠ぺいも可能であると裁判所が容認するに等しい。裁判所に求められるのは、かかる事態に直面した場合に、失われた証拠の断片的発掘に関する評価や確定的に失われたものに対する推認など、こうした人権侵害的取り扱いを生じさせないための、新たな視点の判示である。
5. 本判決は、全国の教職員が直面している劣悪な労働環境や過重労働といった人権侵害の現状を追認するものであり、不当極まりなく、著しく正義に反する。我々は、皆さんのこれまでのご支援に感謝し、この判決に屈せず、上告して闘い続けることを決意するものである。

控訴人 早川由紀子
早川由紀子さんの不当免職撤回を支援する会
各専労協文京七中分会
公務災害認定訴訟弁護団

2023年3月16日

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